オーストラリアはシドニーから450キロほど離れたワガーワガー(Wagah Wagah)という場所にあるキャノーラ農園では、あるインド人が世界最高水準の食用油脂精製所を設立、静かな革命を起こそうとしている。
サクセナ(Saxena)さんは20年前にオーストラリアに移民し、以来、「インドの資源を活用した事業」の設立と運営を試み続けている。
当初は誰もがサクセナさんの挑戦を真剣に受け止めていなかったが、2013年に工場の稼動が始まると、80名の直接雇用、 200件の建設案件、そして500名以上の間接的な雇用を創出し、オーストラリア最大のインド投資を招致し、地域経済に大きく貢献するようになったことから、にわかに注目を浴びるようになった。
サクセナさんが立ち上げたリヴェリーナオイル・アンド・バイオエネルギー(Riverina Oil And Bio Energy PVT Ltd:ROBE)社では、1億5000万ドルを投資して、17万トンの油料種子を粉砕・食用精製できるプラントを開発した。
サクセナさんによれば、オーストラリアでこうした工場を設立した例はなく、予想以上の困難の連続だったという。
それでも、最先端の工場を建設するための資材の70%をインドから輸入し、そして製油所のエンジニアリングに、多数のインド人技術者の力を借りて、完成に漕ぎ着けた。
「インドで22年間働いた経験をもとにして言えば、先端設備を備えた工場は皆無だった。それをオーストラリアで実現しようとした」
工場では毎日、植物タンパク食300トンを生産、オーストラリアの家禽、乳製品そして動物飼料産業向けに出荷している。
今後は生産量を3倍程度まで伸ばしていくことを目標としている。
サクセナさんの「実験」は、インド人が適材適所で、その能力や資源を活かすことができれば、無敵の力を秘めていることを証明したと言える。